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いのちの短い用具達

茶事ともなれば大変な種類と多くの道具を使いますが、その多くの道具達の中にあ
って道具とはいえない脇役でありながら、その日かぎりの命を懸命にふりしぼって、
他の道具をより輝かせているわずかの用具達がいます。


青竹灰吹

八寸・青竹の両細箸
例えば青竹で作られたものは、茶事には欠かせない。出来た時が最も水々しくて、
その日のためのみ働き、そこで一期一会の心をより見事に見せてくれます。
青竹の灰吹、引切蓋置、菜箸、そして露地の塵穴に見る塵箸、棕櫚箒などがそれ
であります。


円座 煙草盆・棕櫚箒
白竹であれば役目を果せないかといえば決してそうではありません。どれも白竹で
あっても役に立つ。しかし現実に灰吹は両方共使うことで、一方の青竹の新鮮さがよ
りきわ立ちます。即ち、寄付待合の煙草盆には白竹を、露地の腰掛待合や、席で薄
茶の時には青竹をと使うことでその青竹がより鮮やかなものになります。

料理の両細の菜箸も、中心になる焼物や八寸には青竹を、そしてその他の鉢には
白竹のものを使うのも主になる料理の格を見ることが出来ます。

いずれもそのいのち短かいものであるが故に、よりその日の思いの尊いものを感じ
るのであります。

 初期の茶の湯で、竹の茶杓もその日のために作られたものであったといわれてい
ます。(茶杓について)そこで使い終われば捨てられるべきものを、その日の記念と
して人に贈られることになり、保存されてそれが次第に今日のように大切に永く伝え
られる道具として、その生命を与えられることになりました。

 その日のために短い命を輝かせる道具の中には、竹のほかに木地のものもいくつ
かあります。


仕組まれた木地曲建水

先ず、木地面桶と古い会記に見られる木地曲の建水があります。小間用のもので あって、木地面桶、そして引切(竹)とあればあらたまった小間での茶事の代表的な 取合せであります。

木地曲はその新しさが命であり、いずれ使い捨てられる短い運命にあります。それ故にそのわずかの間の働きに、そのすべての価値をそそぎ込むという美意識であります。木地八寸丸盆も同じであり、水をふくんだ木地の味を美しと見るのは日本人独特の感性であります。

例えばお膳に付けられた杉箸は、使用の前に水にぬらして、少し水をふくんだ状態で付ける。それを清浄感として受け止められるのは日本人であって、大方の国の方は奇異に感じて濡れているという不潔感としてとらえられるでしょう。水に濡れた美しさを見せる道具はお茶では他にもいくつかあります。

木地曲水指もそれであり、木地小口もそれに属します。今日ではもう見られませんが、かっては小間で使う木地炉縁も水でしめして使ったといわれています。道具ではありませんが、小間のにじり口の戸や、窓のささ戸も客を迎える前に、水で全体をよく濡らして使うのも全く同じ感覚からであります。

さて、このようにして、青竹、木地という新鮮さの価値で生かされ、そして短い間にその美しさや、役目をフル回転して命を輝かすわずかの用具達を見て来ました。同じような種類のもので、道具とはいえないものが、未だほかにも数えられますが最後にその決定版ともいえるものの話をしておかねばなりません。


◎それは、すす竹の茶筅であります。

 


すす竹はそれが生れるまで百年に近い歳月を経て、茅屋根に使われて、人の暮しのつみ重ねられる中でなければ出来ません。その屋根から取りはずされ、その中から適当な太さのを選び出し、それを茶筅に加工されます。

こうして作られた茶筅は、茶室で一期一会の客のために、一時身をふるわせて自らの命を燃焼しつくす、はかない命でありますが、決して私達はすす竹の茶筅のその働きを見過ごしているわけではありません。気の遠くなるような長い年月と、名工の技とに守られて、出来上った茶筅の美しさと尊さを未だ求め続けているのであります。

私達は数え切れない程の道具達を使ってお茶で人を迎え、その楽しみを自分も相伴する。その中には名品の数々もある。長く伝えられた物もある。その華やかな主役達にまじって、実にわずかな命であるがその持味をあます所なく発揮して、茶席をよそおってくれている用具のあることを私達は忘れてはなりません。

【茶筅の種類・仕様・寸法】
(1) 大荒穂 32本立
     主に手造茶碗に用いる。
(2) 中荒穂 56本立
     五分長・三部長あり
(3) 数穂 72本立
     長さ およそ三寸七分位
     太さ 七分
     数穂も五分長・三分長あり
(4) 真数穂 62本立
     長さ 三寸五分位
     太さ 5.6分
     天目に用いる。
(5) 小茶筅
     長さ二寸五分以上
     竹の太さによって立数は不定。


※くろもじ箸(菓子用)は通常六寸のものを使い、木の香の新しいもので皮が青味を残しているものを喜ぶ。本来は全くその時、その人限りで使い捨てられる贅沢なものである。

過去には茶事でくろもじ箸だけは持帰っても良いという習いがあって、これを 持帰ってその日の記念に日付けを入れて残す人達も見られましたが、今日では とても及ばない貴重なものになっているのと、昔より客が多くなって亭主も補充がきかないということで、客は残すのがふさわしい作法といえます。明らかに次に使うということで客が残すのであるから、使い捨ての感覚からすれば、一味うすいものになってしまったのも時代性なのでしょうか。
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