★ ここでロドリゲスの見た当時の炭点前の様子を伝えてくれる一部分を紹介いたします。
「・・・そこに家の主人はいなくて、一同の者のほかには、いくつかの茶の道具があるだけである。
皆はまったく口をきかないで、そこのあるものを直ちに観照しはじめる。
まず最初に各人それぞれに中央の床のところに入って、そこに置かれている一定の昔の銅器か土器、あるいはまた一定の形をした古い小籠に活けてある花を見る。
その次には直ちに、そこにかけてある絵か文字の掛け物を見て、その掛け物なり書かれている文字の意味なりついて考える。
すぐに、炉、深鍋「釜」、炭火と、きわめて上等な灰との様子を見に行くが、その灰はこれ以上にはいい表わせないほど、清淨で上品に調えられた、特別の種類のものである。
その他そこにあるものを一つ一つ見に行く。
家そのもの、細竹を絹柳で結った窓、煤けてはいるがたいへんきれいで調和のとれた古竹づくりの天井、家 の木材の曲り具合、その他この隠遁所をすべて見て、黙って自席に行って座る。
すべての人が見終り、膝を曲げてすわってから、家の主人が内側の戸を開いて、そこからその小部屋に入り 彼の草庵をおとずれてくれた謝意を述べ、客人は招待を受けた礼をいう。
しばらくの間、適当なことを真面目に、しかも控え目に話し合ってから、家の主人が立ち上がり、炭を入れる器に炭を入れて持って来、また、ほかの器に灰を入れて持って来る。
それには、それにふさわしい銅製の匙(灰匙)がついている。
そして炉から深鍋を取って別に置き、新たに炭を置きはじめる(その炭は、すぐに火がつき、決して火花を散 らさない特定の木を材料とし、すべて、たいそう精巧な鋸で引いてあり、焼いて炭にする前と同じような自然の
形をした丸い木である)。
炭を置くには、特殊な方法があって、小さく切った炭を一つ一つ積み上げ、見た目を美しくするために、美しい 灰を周りに注ぐので、一同が近寄ってそのやり方を見る。
それから深鍋をもとに戻して置き、沸騰させるために湯の中に新たに水を注ぐ。
灰の中にはたいへんよい薫りのする少量の香を入れる。 それはこのために調えておいたもので、火となっても燃えないで灰の中で芳香を放つ。
これが終ると、器物を奥の方へしまうが、ある器は大きな羽毛で掃き清められる・・・・・」。
※天正十四年に入りますと、炭点前は、茶会の流れにおいて必要不可欠な要素となっております。 |
|
続く
|
|