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その4

荒れ狂う大波や増水で泥濁りの川を見れば、誰しもここは慎重に行動しなくてはとか今日は漕ぐのを止めておこうと思うでしょう。はっきりと目に見える危険に対してはそれなりに危険予防の行動を起こすのは当然として、川には注意していないと見逃してしまうような、『見えない危険』も数多く存在します。隠された罠に足を取られないために、川にはどんな危険が存在するのかを考えてみましょう。
A ハイドローリック
河床が急激に変化するとその下流には縦方向の渦が出来る(バックウォッシュ)。その循環流は漂流物を捕捉する働きがあり、強い循環流の中ではいつまでもグルグルと回り続けて、そこから脱出できないこともあり得る。とくに危険性の高いのはローヘッド・ダムと呼ばれる水がオーバーフローするタイプの堰堤で、川幅いっぱいに均一な循環流が発生し死亡事故も多く起こっている。ローヘッドダムは直前まで発見しにくいので、事前の調査が重要である。ローヘッドダムを発見したら必ず岸をポーテージしましょう。
循環流からの脱出の方法としては川底の下流への流れをつかみ、一気にバックウォッシュの下流側(アウトウォッシュ)に出る可能性も考えられるが、川底には岩や倒木その他の障害物が堆積していることも考えられ、それらに捕捉される危険性も高い。

 ホール
河床の急激な変化や大きな岩を水が乗り越えているところの下流には、
ホールが出来る。ホールは(A)で述べたようにハイドローリックを発生させるがそのほかにも危険を伴っている。ホールに突っ込んだカヤックのバウが、川底の岩や岩の割れ目に突き刺さると、突き刺さった逆の方向に戻さない限りそこから抜け出せなくなる(バーチカルピンまたはピニングという)。ピニングしたカヤックの乗員は、背中からの水圧に押され容易に脱出する事が出来ない上に、水をかぶり呼吸も困難になる。最悪の場合水圧で艇が折れ曲がり、下半身を圧迫しさらに脱出を難しくする。ピニングはカヤックだけでなく、脱艇して漂流している人間がホールに足から落ちて、足が川底の岩に挟まり動けなくなることもある。
安全が確認されたホールでのロデオプレイ以外は、上流からいきなりホールに突っ込むのは注意しましょう。
 岩
水面ぎりぎりにある岩は直前まで発見しにくく、回避が遅れがちになる。直前で回避行動を取った場合、艇が横向きに岩に当たり、岩を避けようと上流側に体重移動させると、上流側に沈しそのまま岩に押しつけられることがある。さらに岩を中心にして左右のバランスが均衡してしまうと、岩に張り付いてしまう(ラップとかブローチングと呼ぶ)。強大な水圧により艇が押しつぶされ、クローズドデッキのカヤックでは足を挟まれて脱出できない恐れがあり、上体が水面下で呼吸が出来ない状態では一刻を争う事態に発展する。
水面ぎりぎりの岩でも注意して見ていると、わずかな水の盛り上がりや、岩を頂点としたV字型の水の波紋(アップストリームVと呼ぶ)のサインがあらわれていることが多いので、絶えず進路には注意しましょう。どうしても避けきれない場合には、艇を横向きにさせないようにし、それでも横向きに岩に当たりそうになったときは、体重を岩側におき上流沈だけは避け、パドルや手で岩を押して岩から離れるようにしましょう。

 ストレーナー
ストレーナーとは濾し器のこと、岩などに流れが当たっている場合ははねかえるが、その間を水だけ通り過ぎてしまうような障害物の場合は捕捉されてしまう。代表的なものは倒木などが水面ぎりぎりに進路を塞いでいる場合、それに引っかかってしまうと強大な水圧に押されて身動きできなくなってしまう、これは体験したものでないと水圧の大きさと怖さは分からない。
ストレーナーを発見したら一刻も早く回避行動を起こすこと、漂流していてどうしても回避できない場合は、ストレーナーを乗り越えるようにする、絶対に下へ潜ってはならない。

 エディー
エディは休憩や下流の偵察になくてはならない場所ですが、本流の流れが速い場合には強力な渦が発生します。また本流とエディの境目には水圧の壁「エディ・フェンス」が出来、漕ぐ力の弱い初心者にはエディフェンスを越えられないことがあります。エディフェンスに跳ね返されたり、不安定なエディ内で沈脱した場合、強烈な渦に引き込まれることもあり得ます。
 アンダーカットロック
水面下の部分がえぐれている岩のことを言います。流れが直角に近い角度でぶつかっているアンダーカットロックは、水面下に引きずり込まれる可能性が高く、引きずり込まれると水圧に押されて脱出できなくなることがあります。
流れが岩にぶつかると通常はクッションウェーブという返し波が発生しますが、アンダーカットロックの場合はクッションウェーブが発生しません。クッションウェーブが無く、流れが吸い込まれているような所はアンダーカットになっていると考え、近づかないことです。

 シーブ
シーブとはザルのこと。岩などが堆積して進路が狭まっていたりすると、水は通り抜けるのにボートや人は捕捉されてしまいます。護岸用のテトラポットなどもシーブの一種です。
 スタンディングウェーブ
波そのものはとくに危険と言うことはないのですが、自分のパドリングレベルを超えた大きく不規則な波は、沈させられ、脱艇の可能性が大きく、その後の危険につながっていきます。自分のパドリングレベルでは不安があり、さらに下流にいろいろな障害が予測される場所では、ポーテージが賢明です。
 水中の岩
漂流中に流れの中で不用意に立ち上がったり、浅瀬を横断しようとして足を滑らせたりした場合、水中の岩に足を挟まれ転倒し、上体が水圧に押さえつけられて身動きできなくなる危険性があります。(フット・エントラップメントと呼ぶ)ピニングと同じく上流側に挟まれている箇所を移動させないと外すことが出来ず、流れが速く水圧のかかる場所での救助は困難と危険を伴います。さらに上体が水没した状態では呼吸が出来ず、一刻を争う緊急事態に発展します。
J 低温(ハイポサーミア)
濡れた体で風に晒されたり、脱艇して漂流したり、他のトラブルで水中に浸かっていると水に体温がどんどん奪われていきます(水中では大気中より25倍の熱量が奪われます)。軽度の場合は寒気やふるえの症状で済みますが、身体の内部の深層体温が35℃を下回るような状態(中度)になると、運動能力の低下、意識混乱、言語障害などの症状があらわれてきます。さらに深層体温が32℃を下回(重度)るようなことがあると体の硬化や、脈拍、心拍が極端に低下してとても危険な状態になります。
軽度や中度の初期の段階なら濡れた衣服を脱がし、保温をすることで回復することもありますが、重度の状態に陥った患者はショックを絶対に与えないようにして、一刻も早く医師に見せなければなりません。重度の患者に対して、飲み物や食物をあたえたり、急激に体を温めたりした場合、体の末端の冷えた血液が心臓に環流して、さらに危険な状態に陥ることがあるので素人判断での処置はしてはなりません。
このような低体温症(ハイポサーミア)を防ぐには、気温、水温にあったウェアの選択が重要になります、とくに春先は気温はある程度上がってきても、水温は真冬に近い状態のこともありますから十分注意しましょう。また真夏でもハイポサーミアは起こっています、油断は禁物です。
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