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その5


前章で川には様々な「危険な罠がが存在している」、ということがおわかりいただけたことと思います。ではその罠に引っかからないためにはどうしたらよいか?考えていきましょう。
スポーツでも戦でも相手に勝とうとした場合、まず相手の戦力を研究分析し(知識)、必要な装備品を準備し(装備)、戦闘訓練をかさね勝つための作戦を立てますね(技術)、相手のことも知らず、貧弱な装備で、ただ気力だけでは、無惨に討ち死にするのは当然の結果です。ウォータースポーツでも思う存分なおかつ安全に楽しむためには、知識と技術と装備がバランス良く保たれていなければならないと考えます。そしてこの三角形をより大きな三角形にしていくことが、より大きな安全につながります。
知識
1 危険の認識
前章で説明したように、「危険な罠がが存在している」という認識を持つことから、安全への第一歩が始まります。この認識がない限りRiver Safetyについての努力も対策も何も生まれてきません。

2 事前調査
1 の危険の認識は一般的な事柄ですが、具体的に自分が楽しむフィールドでは、どのような危険が考えられるか良く把握しておく必要があります。いままで見過ごしていたものはないか、今一度あなたのお気に入りのフィールドを見直してみましょう。
そして、いままで体験したことのないフィールドに行く場合には、徹底した事前の調査が安全なツーリングの条件になります。
たとえそのフィールドを知っている人に連れていって貰うという場合でも、自分なりに調査し、事前に知識を得ておくというのが、安全に対してはもちろんのこと、チームのメンバーに余計な負担をかけないと言うマナーでもあります。そして事前調査、計画というのはウォーター・スポーツに限らず、一つの楽しみだと思います。

技術
1 危険を察知する能力
知識として「川には危険な罠がが存在している」ということを知っていても、実際のフィールドにおいてその危険を察知する力がないと、何の役にも立ちません。危険の存在を察知する能力はいかにして身につけるか、それには経験しか有りません。有る程度ウォーター・スポーツの経験のある方なら分かると思うのですが、ウォーター・スポーツを始めた頃は川の流れさえ読むことが出来なかったのに、何度か経験している内に、直感的に本流はどこであるかが読めてくるのと同じように、常に意識して流れを観察している内に、直感的に危険な匂いをかぎ分けられるようになってきます。とくに急流においては、その直感的な一瞬の判断があなたを天国へ導くか、地獄へ引きずり込むかの分かれ道になることも多いものです。触らぬ神にたたり無しといいます、危険な匂いをかぎ分けて、無用に近づかないのが安全への近道です。

2 パドリング能力
ここで言うパドリング能力というのは、最も安全なコースを選択する能力を含めて、自分の選択したコースを忠実にたどることの出来るパドリング技術を言います。行きたくないのに、危険な方に寄せられてしまって・・・・という言い訳は地獄の入り口の前では聞き入れてもらえません、自分の行き先は自分でしっかりコントロールできる力を身につけましょう。

3 レスキュー能力
危険を察知する能力もパドリング能力も、人間のことだから時としてミスを犯すこともあります。運悪く「危険な罠」に片足を捕まれそうになったときでも、落ちついてそこから逃れ出るためには、沈着冷静な精神力とレスキューテクニックがものを言います。
まずはセルフ・レスキューの研究と練習をみっちりして下さい。そしてチームの仲間が危機に陥った場合のための練習も日頃からしておきましょう。ただし練習といえども危険はついて回ります、十分安全確保を考えた上で行って下さい。

装備
1 ボートの選択と安全装備
フィールドの条件に見合ったボートの選択も安全を考える上でとても重要なことです。玩具のビニール・ボートで急流を下るというような極端な例は別にしても、水量が多く落差もきつい川ではそれなりに浮力のあるボリュームの大きなボートの選択とか、蛇行や障害の多い川では小回りが利きピニングしにくい形状のボートを選ぶというのは、とても重要なことです。FRP製のスラローム艇やファルト・ボートしか持っていないあなたが、もしクリークを体験したいと思ったら、プラスチック製のクリーク・ボートを手に入れてからにしましょう。
さらに言うまでもないことですが、流れのあるところではPFD(ライフジャケット)、ヘルメット、浮力体などの安全装備は必ず装着しましょう。
ヘルメットについて:ヘルメットはウォータースポーツ専用にデザインされたものを必ず使用して下さい。作業用ヘルメットなどの水抜き穴のない、ツバ付きのヘルメットを代用品として使用した場合、水圧を逃がすことが出来ずにかえって危険な状態になることがあります。
PFDについて:PFDは体にあった大きさのものを正しくフィットさせて着用して、はじめてその機能を発揮します。大きすぎるPFDや、ファスナーやベルト類を締めてない状態では、落水した場合に確実にあなたを浮かしてくれる保証はありません。
多くのPFDの浮力体として使われているフォーム材は、年を経るに従ってフォーム材の中のクローズドセル(空気の部分)がつぶされて浮力が落ちていきます、さらに外装に使われているナイロンも紫外線などにさらされて劣化し強度が落ちていきます。いつ購入したのか分からないような古いPFDを使用している方は要注意です。
一度ご自分のPFDで着用の仕方によって浮き方がどのように違うか、浮力は大丈夫か試しておかれることをお薦めします。泡立つ急流では水中に含まれる空気の影響で浮力がかなり減少することも覚えておきましょう。


2 レスキュー装備
ラフトボートやカナディアン・カヌーは別にして、カヤックでは大がかりなレスキュー・ギアを携行することはなかなか困難です。
そんな中で是非装備しておくことをお薦めしたいのが
A スローバッグ:太さ9mm前後、長さ20mほどの水に浮くタイプのロープがコンパクトにバッグに収納できるようになったもの。
B ナイフ:ロープが体にからみついたりして危険になった場合に切断するためのもの。PFDに装着できて、不用意に脱落せず、必要な時にはワンタッチで使用状態になるもの。
Cカラビナ(2個):ロープ同士をつないだり、ロープとボートをつないだりがワンタッチで出来る。
ナイフを使わなければならないような緊急事態には幸いにまだなったことはありませんが、スローロープとカラビナはいままでずいぶん役に立っています、但しいずれも取り扱いには危険を伴い熟練を要しますので、使う上での訓練が前提です。
そして簡単なファーストエイド・キットも常備しましょう。


3 ウェアの選択
危険の種類の中で低体温症(ハイポサーミア)に大きく関係してくるのが、ウェアの選択です。保温と防水、防風が重要になります。とくに注意するのは木綿素材のものはいったん濡れてしまうと、なかなか乾かずその間に気化熱により体温を奪い続けます、ウォータースポーツに木綿は御法度です。
私のウェアリングを書きます参考にして下さい。
高温期(7月〜9月)
上半身:化繊(ポリエステル系)のTシャツまたは薄手のフリースの半袖プルオーバーに、その日の条件により半袖パドリング・ジャケット
下半身:ウェット素材(ネオプレーン)の膝丈のパドリングパンツ。
中温期(4月〜6月、10月〜11月)
フリース素材のプルオーバーにパドリング・ジャケットとウェット・スーツ(ロングジョン)
低温期(12月〜3月)
フリース素材のプルオーバーとパンツにドライスーツ。
基本的にはこんな感じですが、もちろんその日の天候状態や、漕ぐ川の状況によっても選択は変わってきます。
ウエットスーツは断熱効果に加えて、万一沈脱した場合には擦り傷や打撲の予防にもなります。

そして最後に大事なことは、以上の三角形の大きさと(自分の力)、あなたの目の前のフィールドの状況(対戦相手)を冷静に観察して、どうにも相手の力の方が勝っていると判断したときは、さっさとそこはエスケープすることです。それは臆病でも意気地なしでもありません、戦わない勇気も時として必要です、もっと自分の力を着けてまたこの次対戦を申し込めばよいことですから。
川は決して逃げては行きません、またあなたがやって来るのをずっと待っていてくれます。
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